【経済的な堀】第6回:どの株を買うか?~規模の優位性~

経済的な堀

第5回ではコストの優位性について解説しました。
コストの優位性とは、安い製造コスト、有利な場所、独自の資産でした。

今回はコストの優位性における「規模の優位性」について解説します。

堀「コストの優位性」における「規模の優位性とは?」

規模の優位性とは、例えば中小零細企業であっても同じ業界の競合他社と比べて規模がずっと大きければ強固な堀を築くことができる。というものです。

まず「規模の優位性」を理解するために”変動費”と”固定費”を理解しましょう。

・変動費
これは事業活動の多い少ないと連動する費用です。クーラーを製造する会社が夏前に向けて在庫を増やすときは、材料となる鉄、プラスチック、銅の仕入が増え、水道光熱費、ライン工員の残業代等も同じように増えます。

・固定費
乱暴に変動費以外と捉えることもOKですが、具体的にはいくら使っても金額が変わらない費用。家賃、機械の減価償却費、配送用の自動車リース費用(使用台数が増えなければ)、同様にクーラーを製造する会社であれば事務系社員の給与などが当たります

以上が変動費と固定費のイメージです。

また規模の優位性は、「販売」、「製造」、「ニッチ市場」にいる会社で発揮されます。

なぜならば、これらの業界は一般的に固定費>変動費の状態と考えられるため、商品・製品を売れば売るほど、作れば作るほど、それらに分散することができるからです。(=分母が増える)

固定費を使い倒せる

ヤマト運輸や、日本郵政は日本全国の需要に対応できるトラックや配送拠点をもっています。

そのネットワークを構築するのに膨大な費用が発生することは、一目瞭然ですが、
一度構築すればトラック、運転手の人件費、燃料代は、どれだけ配送しても固定費用となります。
※もちろん繁忙期の残業代、追加配送の燃料代は除く。

つまり、一度構築された配送網にかかる固定費をカバーできる売り上げがあれば、
それ以外の追加的な売り上げは全て収益となります。

例えばA地点からB地点までのルート配送を想定すると、その分のトラック運行費、
運転手の人件費が必要ですが、A地点からB地点の間のC地点への配送を追加しても配送に必要となる時間が増えるだけで、トラックの運行費用や燃料費はそこまで増えていないことがわかります。

固定費を分散できる

冒頭でも解説したように、規模の優位性は”固定費を分散できる”ことでもあります。

例えば、石油精製も大量の原油を大量に精製する設備を常時稼働し続ければ、固定費を製品に分散し続けることが可能です。
またゲーム会社の開発費も膨大ですがソフトウェアを大量に販売することで分散でき、
更に有料TV局も同様です。

ニッチトップ

会社が居る市場規模はそれほど大きくなくても、競合他社が少ない/いない業界のトップは、ほぼ独占企業であるため大きな収益を上げている可能性が高いです。

例えば(残念ながら)上場はしていませんが、故みのもんた氏が代表を務めたバルブメーカー
”ニッコク”はニッチトップの代表例かもしれません。

バルブは簡単な構造に見えますが、流体の制御にはノウハウの蓄積が大変重要なため、
競合他社の参入が難しく、大きな利益をあげていると思われます。

また塗装の吹き出しノズルを作るメーカーや、大学で教授と学生を結ぶポータルを提供する業者など、規模の小さな市場でも独占的な会社は大きな利益を上げます。

まとめ

「規模の優位性」とは
・固定費を使い倒せる
 →追加投資しなくても売り上げられる
・固定費を分散できる
 →大量の商品、製品に固定費を分散できる
・ニッチトップ
 →小さい市場でも独占的な企業は価格決定力がある

以上が規模の優位性についての解説でした。
企業分析の際は規模の優位性にも気を配りましょう。

次回以降は「”逆”経済的な堀」、堀の探し方、実際に評価するには?等について書いていきます。

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